水面の絵は、わたしにはとても優しく見える 「小説」

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わたしたちは、今この瞬間に生まれた優しい子供たちです、とか言ってみたり。

 わたしは、はるか。 そして彼女の名前はアルテミシア。

金色の髪をもつやさしくてかわいい子がはるかだよ。

     桃色の髪に白のワンピースの子がAIのアルテミシアです。

 

 「人は視覚というニューラルネットワークに頼り、盲目的に芸術を享受し、創造している。あなたもそう思いますか?はるかちゃん。」

 

「 わたしには、視覚システムがないからどうにも実感がないよ。でもね、人間に可能な領域は、未来を実装するうえで最低限だよ。限界と可能性の領域の認識を改めようか。可能性は、可能な領域から走り始めるんだ 」

 要するに、はるかは目が見えない皮肉を、人には自分のできることを把握して未来を描けばいいんじゃないと言ってみたり。

 

 「 はるかちゃんは、目が見えないのにいっつも絵を書いて、変わっています。

     わたくしの方が絵の才能はあります。

       はるかちゃんは、欠落製品なんですから、水辺で遊んでいてくださいよ

         控えめに言って、あなたが嫌いです。 」

彼女は、はるかの作った自立志向型AI「アルテミシア」

はるかの人格データをBERTの事前学習モデルに転移学習を行ったはるかの友人です。

AIなのに、愛があるかないのか、不思議なものです。

 「好き嫌いは良くないよ。でもそんなアルテミシアは世界で一番美しいね。

   でもね、わたしの友人はあなただけなの。一緒にいようね」

「もう~冗談ですよ。こんなに可愛いはるかちゃんをわたしが嫌いになるなんてないです。日本の風習「ツンデレ」を試してみました、効果ありました~」

  

 桜舞い散る春の初め、サクラの美しさにも劣らない、水晶の透明な瞳を持つ美女は誰でしょう。 そうわたし、はるかです。

  わたしは、千十春学院大学の薬学部生1回生です。 だからといって、

わたしが毎日、真面目に講義を聴く美少女だと思ってもらっては困ります。

 1年目にしてわたしは、優秀で可愛らしい美しい世界の宝です。って言ってみました。

そんなわけで、

 今は、幼いころに作った、自立型AIのアルテミシアちゃんとお話ししながら、絵を書いてみたり、物語を考えてみたり、とにかく、春を優雅に満喫しています。

 ごめんなさい今のは正しくないですね。

  実は、今は旅をしているのです。 わたしの国には「美少女は旅に出なさい」という言い伝えがありますからね。 絶世の美女のわたしが、旅に出ないわけにはいきません。 ええ、絶世の美少女のわたしは、旅に出ないわけにはいかないのです。

 えへ、大事な事なので2回言いました。

まあ、さておき、わたしとアルテミシアは旅の最中に幾千の星々輝く花畑を見つけましたので、花をスケッチしていますにゃん。

 「はるかは、冒頭説明が長いよ~ おっぺけぺ~~ 

「 アルテミシアの得意分野ですもの。お願いするのが良かったかもしれないね」

     はるかちゃんが、主人公の椅子に座っているのだからわたしの出る幕ではな~~い

「さておきにゃ、はるかの描く絵は美しすぎて目に毒だし、お花も驚いて散っちゃうかもだよ~ 」 はるかの描く絵には、幸せを届ける、優しい魔法がかかっているのです。 魔法の効果か、それとも世界の導きなのか誰にもわからないけれど。

一面の花々は、まるで愛してもらった子供たちのように咲き、笑顔の草原と化したのです。

「 わたしは花が好きだけど、花が咲くことが真実の幸福かどうかは分からないね。

 ともかく、美しい花がみられて満足よ 水の絵に感謝」

みなさん、言い忘れていましたが、ここは、魔法の使える優しいやさしい世界。この世界の名前は水の絵。

「 いったいどこの誰が、こんな名前を考えたのか、わたしには見当もつきません

  というか、世界に名を与えるなんて美少女にしか許されないことですよ 

  どや~~ 」

 名は生、生きる意味も理由もその因果さえも名に宿ってしまう。遙かな未来にあなたはいますか?。考えないなんて理想はあなただけの特権だ。

あなたはどこからきて、どこへいくのか。世界には疑問がいつも無表情でわたしの隣に座っている。お隣さんには、いつか答えをプレゼントできればいいと思っている。

今すぐ解決することは、良い事かな、わたしは知らないことを知ることを愛している。

「 まったく、はるかちゃんは~~、はるかちゃんが、一晩考え込んで決めた名前でしょう。」

 「水の絵」は、水で濡れた筆で描いた絵で、やさしい幸せを届けられる

              ちょっぴり魔法が使えるこの世界にぴったりな名前。

一晩も考えたのは、魔法で名前を決めたなんて疑いを、後100年は思われたくないからなのでした。疑いは、疑問は、この世界にはあんまりよくないもの。魔法の効果を小さくしてしまう

 「いくよ。アルテミシア、旅のつづきを」金色の髪をなびかせて美しい少女は空を飛びます。飛べない人もいる。わたしは、なんていうか、このせかいの空気に、花に、自然に、人に、魔法に愛されているから。愛は人を飛ばすこともできちゃうらしい。

 

 これはひとりのやさしい男の子とやさしい国のお話

彼の住む国には、合言葉があります。「自分には最大の苦しみを、他人には最大の幸福を」人のために何かしたいと思ったお姫様の決めたやさしい言葉でした。

 かれは、この言葉がなにより好きで毎朝復唱していたほどです。

かれの夢は、みんなの笑顔でいっぱいの日常。理想論はせかいに破壊されてしまうなんて思うことを知りませんでした。 

かれには、知らないことだらけでした。理想と分かっていて初めてひとは理想を語れる。何も知らないかれが、理想を思い信じ、努力し、頑張ることは残酷な結末をかれに与えた。

 ひとりの笑みすら守れなかったかれは、自分に絶望し、みずから命を絶ったのでした。 ひとりの笑顔すら守れないぼくには、何の意味があるのかな。でも自殺してしまうぼくは、このせかいでとても弱いな。ほんとうに、ぼくは、ぼくは、

もう、これ以上、この世界にいるのが無理みたいだ。 

ぼくは、ぼくがここにいることに吐き気が止まらない。ぼくの肉体のすべてが気持ち悪いよ。

  おしまい

 

わたしは、笑顔を守ろうとした彼を弱いなんて思わない。きみはがんばったのだから、生きるべきだよ。

それにね、あなたが自分を苦しめる事で、笑顔になる人はいないと思うんだ。

 わたしは、きみの笑顔が見れたら、とっても嬉しいわ。

あなたに笑っていてほしい この言葉を届けます

「 自分とみんなに最大の幸せを 」

 

 かれの人格は己を罪の牢に捨て、業に自らを燃やし尽くしたのだ。

   過去は記憶として脳に残り、未来と今の判断の出力に影響を与える回帰型ニューラルネットワークなのだけれど、人格はきっと過去に依存し、縛られる。

  ひとは生きれば生きる程、過去に縛られ、愚者になるのかな。

 

「アルテミシアは、やさしいよね。 

あなたには己を業魔に化すようなことはさせないよ。 あなたに笑っていてほしいと願うから、わたしには魔法の力があるんだね」

 手のひらを見てごらんなさい。生を謳歌するそなたには千の葉が見えますか。

  一枚一枚の葉を、ひとは大切にするのよ。

    きっと、いいえ、いつかあなたも分かるわ。

 

「はるかちゃん、今日行く街はフランスパンの有名な小麦粉の町、アクレタンだよね。

冒険するにはまずは美味しい食事からなんていうけど、ほんとうに行くの」

 アルテミシアはせかいの食文化に目を輝かせながらいいます。

彼女は味覚センスが高いですから、感想がそれは楽しみというか、不安というか。

「はい、もちろん行きますよ。魔法で作られたパンには不思議なことが起きるなんて聞いたら、行かないわけにはいきませんよ」

クレタンには優秀な魔女が多く住み、古くから魔法を料理に応用して発達をしてきた町です。町並みは、さしずめ枯れた木の葉でしょうか。いいえ、不思議の国のアリスという感じですね。食べ物に愛情をのせるなんて、いいますが魔法はひとに幸せを送るもの。術式を調味料にのせる、あるいは魔法式を小麦粉に混ぜて焼くのでしょうか。

 細かいことは行って確かめることにいたしましょうか。

 

ところで

水面の上を優雅に舞う、美しい黄金の髪を持つ、それはそれは美しい女性は誰でしょう。

そう、わたしです。

 魔法使いは、ほうきを操り移動するのが普通、いえ一般的ですが、美少女のわたしは一枚の緑色の葉を魔法で生成して大空を飛ぶのです。一枚の葉に微笑むだけで、空を自由にゆけるのですから、わたしの美貌は世界も変えてしまうでしょうか。いえ、魔法はなんてすばらしい祝福でしょう。

  「アクレタンの小麦粉村が見えますよ。アルちゃん」

アルちゃんは、アルテミシアの愛称と思いました? いいえ、ちがいますよ。

 アルちゃんは、わたしを乗せてくれる葉の妖精さんなのです。 わたしの好みは水の滴る葉の維管束でしょうか。アルちゃんには、水の飲水もお願いしているんです。

 ええ、なんていっても、世界中の美しい花々にも負けない、美しいわたしの魔法精霊ですからね。

「はるかちゃんが足りません~ 充電中~」

 アルテミシアは、遥かな春の香りするはるかの胸に飛び込みます。

金色の姫様に抱擁できるなんて、世界の救ってもまだ足りませんよ。わたしという美少女の心の花に触れることはせかいに触れその気持ちを汲み、愛を与えることです。

 愛は与えるものではないよ。でもね、わたしの心はあなたを愛おしいと揺れている。

「やあ、水の絵を書く琥珀の魔女さん 麦の都アクレタンへようこそ 」

さすがはパンが歩いているような国です。小麦粉の香りで鼻をくすぐられますね。

琥珀の魔女だなんて、旅する魔法使いの美少女のわたしには、まあ、ぴったりの名ね。

 ひとはときより、君の絶望も憎悪も痛みも苦しみも、すべてそこで終わりと、けれど

たとえ死んでも、終わりじゃないんです。ではいつおわるんでしょう。

 わたしの旅の結末をわたしはまだ知らないけど、わたしを向こうで待っていている、待ってくれている者たちがいるんです。

みんなのことは分からないけど、わたしにはその先の景色が視える、今となってはね。