人は変わっていく生物だから

 おなじ場所には、二度と帰ることはできないと思う。帰り道をわたしは覚えていない。安寧の頂きを視つけても、どこかに忘れてしまう生き物がわたしたち。

地獄への道はすぐに思い出せるのに、安心できる最高の思い出は消えてしまうから。

 

 わたしにとっての、世界の地面が働くことで初めて生まれる。

人は、足をついて歩ける地面がなければ、墜ちてしまう。わたしの居場所はないけれど、歩き続けるから。わたしの世界は、決して良い方向へ向かうことはないのかもしれないけれど、歩くことで、見える世界が変わっていくことは、知っているから。