サクラダクエスト・脳内小説

僕の名前は、名倉 春という。この城の主をしている。

僕らは今からゲームをする。君にはこれから僕が話す物語の真相を暴いてほしい。

 

あるところに、ヨモギが一面に咲く村があり、そこにはある一人の少年が住んでいた。彼はとても聡明で、優秀で誰よりも優しく、誰からも愛されていた。彼の信念は、自分以外のすべての人間を愛し、助けられるようなヒーローになることである。彼は、その信念の元、生き続けた。そんな彼には、一人の友人がいた。友人は、彼とは対照的に、すべての人間を利用し、自身のエゴと勝利のみを求め生きるような邪悪な存在であった。そんな対照的な二人だが、不思議と話が合い、二人は意気投合して幸せな毎日を送っていた。

ある日の暮れ方のことである。友人は放課後一人で河川敷を歩いていた。彼は友人を見つけると一緒に帰る提案をするが、珍しく拒否され一人で帰ることにした。

その日の友人は、まるでこれから人を殺すような眼をしていた。それ以来二人が会うことはなかった。

おしまい。

 

それでは答え合わせをしよう。

彼の名前は名倉 春。そう、これは僕自身の話。 そして友人の名前は名倉 春

彼らは、同一人物さ。僕は二重人格を持つんだ。

一方の彼は、他人には最大の幸福を与え、自身には最大の苦しみを与えることで自身のアイデンティティを形成していた。彼の信念は自身を苦しめ、精神は歪み、ある時生まれたのが、彼の信念とは対照的に、全人類を犠牲にしてでも自分の幸福を願うもう一人の自分自身である。彼らは二人いるからこそようやく、精神を保つことが出来たのである。しかし、友人は彼を本当の意味で救う事は出来なかった。彼は知らず知らずのうちに業を重ね、罪を重ね、人を騙し、嘘をつき、人を殺め、いつしか業魔となった。

そんな彼が最後に選んだのが、自身を消滅させて、もう一人の自分に体を明け渡す選択肢であった。

だから、今、君の目の前にいるのは、自分の幸福のみを願う友人の僕さ。

 

これで真相は明かしたよ、果たして真相を暴くことが出来たかな。